事前指示書(リビングウィル)の書き方|延命治療拒否から尊厳死宣言まで
回復の見込みがないとき、人工呼吸器をつけてほしいか。胃ろうで栄養を入れ続けてほしいか。家族に「あなたならどうする?」と聞かれたとき、即答できる人は多くありません。日本には尊厳死を法的に定義する単独の法律がなく、書面で意思を残しておかなければ、医療現場で家族が判断を迫られることになります。
この記事では、終末期の医療に関する自分の意思を書面にまとめる「事前指示書(リビングウィル)」の書き方と、法的効力を最大限に高める方法を解説します。
事前指示書(リビングウィル)とは何か
事前指示書は、将来自分が意識を失ったり判断能力を喪失したりした場合に備え、終末期の医療措置について「してほしいこと」と「してほしくないこと」を事前に文書化しておくものです。日本ではリビングウィルとも呼ばれます。
法的拘束力を直接定めた法律はありませんが、厚生労働省が推進する「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」の中核ツールとして位置づけられており、医療現場では本人の意思を尊重する重要な判断材料として扱われています。
事前指示書に記載すべき5つの項目
1. 延命治療の具体的な可否
「延命治療を拒否します」という一文だけでは、どの処置を指しているか現場が判断できません。以下を個別にチェックまたは記載する形式にします。
- 心肺蘇生術(CPR):心臓マッサージ、AED
- 人工呼吸器の装着
- 人工栄養・水分補給:経鼻胃管、胃ろう(PEG)、中心静脈栄養
- 人工透析
- 昇圧剤の投与
2. 緩和ケアの希望
延命は望まなくても、痛みの緩和は最大限受けたいという二段構えの指示が一般的です。「苦痛を和らげるための医療用麻薬(モルヒネ等)の使用は積極的に希望する」と明記しておくことで、医療チームが疼痛管理に集中できます。
3. 代理判断者の指定
意識を失った後に医療チームとの最終的な合意形成を行う人物を指名します。配偶者や子どもが一般的ですが、家族内で方針が割れるリスクがある場合は、自分の意向を最も正確に理解している1名を明確に指定しておくと安心です。
4. 最期の場所の希望
自宅での看取りを望むのか、病院で最善の管理を受けたいのかも記載できます。在宅看取りの場合、かかりつけ医の訪問診療体制が必要になるため、事前指示書を作成するタイミングでかかりつけ医にも意向を伝えておくのが理想です。
5. 臓器提供・献体の意思
臓器提供意思表示カードと併せて、事前指示書にも明記しておくと医療チームへの伝達が確実になります。
法的効力を最大限に高める「尊厳死宣言公正証書」
自分で書いた事前指示書でも医療現場で尊重されるケースが増えていますが、最も信頼性が高いのは公証役場で作成する尊厳死宣言公正証書です。
公証人が本人の意思能力を確認した上で作成するため、「本人が判断能力のある状態で自発的に宣言した」ことを客観的に証明できます。認知症の進行後に家族が「本人の意思だったのか」と争うリスクを大幅に下げられる点が最大のメリットです。
作成費用の目安:
- 公証人手数料:11,000円(2024年4月改定後の基本手数料)
- 所要時間:事前相談を含めて2回の訪問(計1〜2時間)
公証役場は全国に約300カ所あり、最寄りの公証役場に電話予約するだけで手続きを開始できます。入院中や介護施設にいる場合は、公証人が出張して作成することも可能です(別途出張費が発生)。
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書き方の実践ステップ
- 下書き段階:日本尊厳死協会のリビングウィルひな型や、各自治体の「私の意思表示ノート」を参考に、自分の意思を洗い出す
- 家族との共有:配偶者や子どもに下書きを見せ、意向を説明する(人生会議)
- かかりつけ医への共有:主治医に写しを渡し、カルテに記録してもらう
- 公正証書化(任意):法的効力を強化したい場合、公証役場に予約して尊厳死宣言公正証書を作成
- 定期見直し:健康状態や考え方が変わったら、いつでも撤回・書き直しが可能
よくある疑問
事前指示書を書いたら、絶対にその通りになるのか?
日本には法的拘束力を定めた法律がないため、「絶対にその通りになる」とは言い切れません。ただし、厚生労働省のガイドラインでは本人の意思を最大限尊重するよう医療機関に求めており、公正証書の形であれば現場の医師にとって非常に強い判断根拠になります。
一度書いたら変更できないのか?
いつでも撤回・変更可能です。公正証書の場合も、新しい公正証書で撤回・変更を明記すれば旧版を置き換えられます。体調や家族状況の変化に合わせて、数年ごとに見直すことをおすすめします。
終末期の意思表示は、自分のためだけでなく、「判断を迫られる家族の精神的負担を減らす」行為でもあります。書き方に迷ったら、終活の総合ガイドで事前指示書の記入テンプレートと、医療・法律・行政のすべてを網羅したチェックリストを活用してください。
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