遺言書 書き方|自筆証書遺言の正しい作成手順と法務局保管制度
遺言書を書くべき理由は「家族が困らないため」
遺言書がなければ、相続人全員が集まって遺産分割協議を行い、全員の実印と印鑑証明書をそろえなければなりません。きょうだいの一人が海外在住だったり、疎遠な親族がいたりすると、この協議だけで数ヶ月かかることも珍しくありません。
遺言書があれば、相続人は協議なしで預金解約や不動産の名義変更に着手できます。「うちは揉めないから大丈夫」という家庭ほど、いざ相続が始まると方針が割れるものです。
自筆証書遺言の書き方:5つの絶対ルール
民法が定める自筆証書遺言の方式要件は厳格で、重要な要件を欠くと遺言が無効となるおそれがあります。
①全文を自筆で書く
パソコンやタイプは不可。ただし「財産目録」に限り、パソコン作成・通帳コピー・登記事項証明書の添付が認められています。目録の各ページには署名と押印が必要です。
②日付を正確に記載する
「令和8年9月吉日」のような曖昧な記載は無効。年月日を特定できる書き方(「令和8年9月6日」など)にしてください。
③氏名を自書する
戸籍上のフルネームが最も安全です。
④押印する
実印でなくても法的には有効ですが、後日の紛争を防ぐには実印がベターです。
⑤加除訂正は所定の方式に従う
書き間違えた箇所には二重線を引き、正しい文言を記入したうえで「〇行目〇字削除、〇字加入」と付記して署名し、変更箇所に押印します。方式違反の訂正は無効となるため、書き損じが多ければ最初から書き直す方が安全です。
法務局保管制度:検認不要で3,900円
2020年7月に創設された自筆証書遺言の法務局保管制度は、個人の終活に大きなメリットをもたらしました。
主な利点:
- 死後の家庭裁判所による検認手続きが完全に不要
- 法務局が原本と画像データを一元管理するため紛失・改ざんリスクがない
- 手数料はわずか3,900円
保管申請時の形式要件(1つでも不備があると却下):
- A4サイズの用紙を使用
- 余白を確保(上5mm・下10mm・左20mm・右5mm以上)
- ホチキス留め禁止(スキャナ取り込みのため)
- 封筒に入れて封印しない
保管申請は本人が法務局に出向く必要があり、代理申請は認められていません。事前にWebまたは電話で予約を取りましょう。
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公正証書遺言との使い分け
公正証書遺言は、公証人が2人以上の証人立ち会いのもと作成する遺言です。費用は遺産額に応じて数万円から数十万円かかりますが、遺言能力(認知能力)を公証人が確認するため、死後に「認知症だったから無効だ」と争われるリスクが格段に低くなります。
公正証書遺言を選ぶべきケース:
- 相続人間に対立の火種がある
- 自分の認知能力に将来的な不安がある
- 事実婚や同性パートナーに財産を遺したい(法定相続権がないため遺言が唯一の手段)
費用を抑えたいなら法務局保管制度付きの自筆証書遺言、紛争リスクを最小化したいなら公正証書遺言という判断基準がシンプルです。
遺言書に書けること・書けないこと
法的効力を持つのは、主に以下の事項です。
- 各相続人への財産の指定(「自宅不動産は長女に、預貯金は長男に」など)
- 相続人以外への遺贈(「友人Aに〇〇を遺贈する」)
- 遺言執行者の指定
- 認知(婚外子の認知)
- 祭祀承継者の指定
一方、「きょうだい仲良くしてほしい」「葬儀は家族葬にしてほしい」といった希望は「付言事項」として記載できますが、法的拘束力はありません。ただし家族への思いを伝える手段として実務上は非常に有効です。
まず一歩を踏み出すなら
遺言書の作成は、財産の棚卸しから始まります。預貯金口座、不動産、有価証券、デジタル資産を一覧にし、誰に何を残すかを整理するだけでも大きな前進です。
体系的に終活を進めたい方は、終活完全ガイドで遺言書作成から死後事務委任、デジタル遺品整理までの全体像を確認できます。
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