相続人の確定と必要書類の揃え方:法定相続情報一覧図も解説
相続人の確定と必要書類の揃え方:法定相続情報一覧図も解説
相続手続きを進めるにあたって最初に立ちはだかる壁が「戸籍収集」だ。銀行・法務局・税務署のどこに行っても、「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を持ってきてください」と言われる。
なぜ死亡時の戸籍だけでは足りないのか。それは故人の一生を通じて「法定相続人が全員で何人いるか」を確認するためだ。再婚前の子供、婚姻外で認知した子供——こうした関係は死亡時の戸籍だけを見ても分からない。
法定相続人の範囲と優先順位
民法で定められた法定相続人の範囲は以下の通り。
| 順位 | 相続人 | 備考 |
|---|---|---|
| 常に | 配偶者 | 婚姻届を出した法律上の配偶者のみ(事実婚は対象外) |
| 第1順位 | 子(直系卑属) | 養子・認知した子も含む。子が先に死亡している場合は孫が代襲相続 |
| 第2順位 | 父母・祖父母(直系尊属) | 第1順位がいない場合のみ |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 第1・第2順位がいない場合のみ |
法定相続分(遺言書がない場合の原則的な取り分):
- 配偶者と子:配偶者1/2、子で残り1/2を均等分割
- 配偶者と父母:配偶者2/3、父母で残り1/3を均等分割
- 配偶者と兄弟姉妹:配偶者3/4、兄弟姉妹で残り1/4を均等分割
戸籍謄本の収集:何が必要でどこに請求するか
収集すべき戸籍の種類
被相続人(故人)の出生から死亡までを連続してつなぐために、以下の書類を全部揃える必要がある。
- 戸籍謄本(現在戸籍):最新の戸籍。死亡の記載が入ったもの
- 除籍謄本:戸籍の構成員が全員いなくなった(全員死亡・転籍など)戸籍
- 改製原戸籍謄本:戸籍の法改正や電算化に伴いコンピューター化される前の旧版戸籍
手数料:戸籍謄本450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本750円(1通あたり)
郵送で請求する手順
本籍地が遠方にある場合、役場に直接出向く必要はない。郵送での請求が可能だ。
郵送請求に必要なもの
- 戸籍謄本等の請求書(市区町村役場のHPからダウンロード)
- 本人確認書類のコピー(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 委任状(故人以外の方が請求する場合—相続人であれば不要なことが多いが、役場に確認)
- 定額小為替(郵便局で購入。手数料1枚につき200円)
- 返信用封筒(切手を貼ったもの、宛先を記入)
請求の手紙の文面例: 「亡〇〇(享年〇歳、最後の本籍地:〇〇市〇〇番地)の相続手続きのため、出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本一式を請求します」
役場窓口でも「最初から一番古いものまで遡って全部ください」と明確に伝えれば、担当者が必要な戸籍をすべて出してくれる。
転籍が多い場合の注意
故人が複数の市区町村に本籍を持っていた場合、現在の本籍地役場からさかのぼって前の本籍地役場、さらにその前と、複数の役場に郵送請求を送る必要がある。最初の役場から送られてきた除籍謄本を見れば「前の本籍地」が記載されているため、それを頼りに次の役場へ請求するという手順を繰り返す。
法定相続情報一覧図とは何か
戸籍謄本を全部集めると、紙の束がかなりの量になる。これを各手続き先(銀行・法務局・税務署など)に提出するたびに原本を使い回すのは非効率だ。
そこで役立つのが「法定相続情報一覧図」だ。
法定相続情報一覧図のメリット
法務局に戸籍謄本一式を持参して申請すると、相続関係を図で示した一覧図に法務局の認証印が押されたものを無料で複数枚発行してくれる。これ1枚を提示すれば、戸籍謄本の束の代わりとして各機関で使うことができる。
- 費用:無料(戸籍の収集・郵送にかかった実費のみ)
- 複数枚発行できる(枚数に制限なし)
- 各手続きで同時並行して使える:銀行A・銀行B・法務局に同時に提出できる
戸籍謄本の原本は一度に1か所にしか提出できないため、複数の銀行を順番に回るしかなかった。法定相続情報一覧図を使えばこの制約がなくなる。
法定相続情報一覧図の作り方
STEP 1:戸籍謄本を全部揃える 被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍と、相続人全員の現在の戸籍を集める。
STEP 2:一覧図を手書きまたはExcelで作成する 被相続人を中心に、配偶者・子・父母などの関係を図で示す。法務局のHPに記載例がある。
記載内容:
- 被相続人の氏名・生年月日・最後の住所・死亡日
- 各相続人の氏名・生年月日・続柄(・存命か死亡済みか)
STEP 3:法務局に申出 以下を持参して法務局の「不動産登記申請窓口」へ持ち込む。
- 被相続人の戸籍謄本一式(原本)
- 相続人全員の戸籍謄本(原本)
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
- 申出人(相続人の1人)の氏名・住所が分かる公的書類
申出から認証印付き一覧図の発行まで通常1〜2週間程度かかる。
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相続手続きで必要な書類 一覧表
| 書類名 | 入手先 | 手数料 | 主な提出先 |
|---|---|---|---|
| 除籍謄本(出生から死亡まで連続) | 本籍地の市区町村役場 | 750円/通 | 銀行・法務局・税務署 |
| 住民票の除票 | 最後の住所地の市区町村役場 | 300円/通 | 法務局・銀行 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各自の本籍地役場 | 450円/通 | 銀行・法務局 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 各自の住所地役場 | 300円/通 | 銀行・法務局 |
| 固定資産税評価証明書 | 不動産所在地の市区町村役場 | 300〜400円/通 | 法務局 |
| 法定相続情報一覧図 | 法務局(無料発行) | 無料 | 銀行・法務局・税務署 |
隠れた相続人の発見:なぜ古い戸籍まで必要なのか
戸籍の遡及調査をしていると、ときに知らなかった相続人が見つかることがある。
- 再婚前の前妻(または前夫)との間に生まれた子
- 婚姻外で認知した子
- 養子縁組した子(養子縁組を解消していない場合)
これらの人物は法定相続人として遺産分割協議に参加する権利がある。もし存在を知らないまま遺産分割協議書を作成してしまった場合、その協議書は無効になる。発覚後に最初からやり直しとなる。
戸籍を出生まで遡ることは、このような事態を未然に防ぐためでもある。
まとめ
- 法定相続人を確定するには故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要
- 遠方の役場には郵送で請求できる。定額小為替を同封する
- 法定相続情報一覧図を作れば、複数の機関で同時並行して手続きを進められる
- 一覧図の発行は法務局で無料
戸籍収集は手間がかかるが、ここを正確にやっておかないとすべての後工程が止まる。相続手続きガイド — 日本の遺産整理では、郵送請求に使える依頼文テンプレートと、手書き戸籍の解読早見表も収録している。
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